用語説明

運動残効

「同じ方向の運動をしばらく見続けると,物理的に止まっているものが反対方向に動いて見える」という現象で,運動を処理するメカニズムが順応し,実際には存在しない運動が脳内でつくり出された結果と考えられている。

運動残効は,以下のようなメカニズムで生じると考えられている(図)。我々の脳の中には様々な方向の運動を検出する細胞群がある。その中で,左/右の方向に応答する2つの細胞LとRを考えると,通常,静止刺激に対しては,2つの細胞は同じ強さで反応する。同じ強さで反応することを,刺激が静止していることと脳は解釈する。次に,右方向の運動を見せると,R細胞が強く反応する。この状態をしばらく続けると,順応という現象により,R細胞の反応が次第に弱まってくる(この場合,順応とは疲労のようなものを意味する)。この後,再び静止刺激を見せると,今まで反応していたR細胞は疲れて鈍くなっているので,L細胞のほうが相対的に強く反応する。このような細胞の反応パターンは,左方向の運動を見ているときの状態と同じなので,脳の解釈の結果,静止しているのに左方向の運動が見えることになる。

図_運動残効とそのメカニズム