用語説明

共鳴トンネル効果

結晶成長技術は,原子の数が数えられるくらい非常に薄い層構造を結晶基板上に形成することを可能にする。化合物半導体GaAsとAlAsを層状に積み上げたもので,それぞれの厚さは数nm(原子層にして10~40層程度)である結晶構造をつくることができる。この構造の伝導帯は電子に対して2つのエネルギー障壁を持つ。2つの障壁に囲まれた部分は量子井戸と呼ばれるが,ここでは電子はある限られたエネルギーしか持つことができない。これらは,電子が波の性質を持つためである。電子の波は障壁のところで固定されるから,その波長の1/2が量子井戸の幅(あるいは整数分の1)と一致しなければならない。波長が決まるとエネルギーも決まるので,電子は限られたエネルギー(これを量子準位と呼ぶ)しか持てないことになる。このとき,量子準位と同じエネルギーを持った電子は2つの障壁を通り抜けることができる。つまり,このエネルギー準位のところに電子が通り抜けられるトンネルが形成されるため,これを共鳴トンネル効果と呼ぶ。

◆ 《MOBILE》

共鳴トンネル素子を用いた新しい論理ゲート。単安定-双安定転移論理素子の略で,多数の入力を一度に処理できる特徴を持っている。2つの共鳴トンネル素子を直列に接続し,パルス状のバイアス電圧で駆動する。多値論理回路への応用や超高速アナログ回路への応用が有望視されている(図1,2)。

図1_MOBILEの基本回路図2_MOBILEの動作原理