番号ポータビリティ
ユーザが利用する通信サービス事業者を変更したときに前と同じ番号を使用できること。広域の番号ポータビリティは,地理的な移動やアナログからISDNのようなサービス変更をしても番号が変わらないことも指すが,ローカル競争の観点から現在問題になっているのは事業者間の番号ポータビリティである。古くは「番号の可搬性(Portability)」と呼ばれていたもので,ユーザが移転もしくは契約事業者の変更が行われても,ユーザの番号が変わらないというもの。
契約事業者の変更に対する番号ポータビリティ(事業者間ポータビリティと呼ばれている)は,番号変更に伴う関係者への周知コストが不要になるだけでなく,事業者間の競争が活性化され,各事業者のサービスが向上し,結果的に料金の低廉化が促進されるというメリットが考えられる。
1996年4月に「NTT地域通信網のように他事業者が当該ネットワークと接続することが不可欠な設備とその他の通信網との接続の確保を図ることが,公正有効競争を確保のうえで重要な政策課題」との理由から,相互接続の基本的なルールの在り方が電気通信審議会にて検討されることになり,1996年12月に,基本ルールの在り方が答申され,他事業者のサービス提供に不可欠な設備を有する事業者に対して義務化する事項の1つとして番号ポータビリティが盛り込まれた。
電気通信審議会答申では,番号ポータビリティが確保されていない状況を「特定事業者の加入者は,番号変更に伴う周知等のコストを考慮し,事業者を変更する際に番号が変わる場合には,事業者を変更しない可能性があることから,特定事業者が競争上の優位性を保持し続けることになる」と指摘している。したがって,「競争の促進および利用者利便の増進の観点から,特定事業者の利用者が他事業者に加入を変更する場合に,番号ポータビリティが確保されることが求められる」としている。
具体的には,番号ポータビリティを確保すべき番号として,(a)一般加入電話番号,(b)ISDN番号,(c)着信課金サービス用番号を対象としており,このうち(a)と(b)については,同一住所において事業者を変更する場合に限るべきとしている。
また,番号ポータビリティは,①ロケーションポータビリティ,②事業者間ポータビリティ,③サービスポータビリティ,の3種に分類できる。
① ロケーションポータビリティ:ユーザが移転しても同じE.164番号を使用可能。
② 事業者間ポータビリティ:事業者を変更しても同じE.164番号を使用可能。
③ サービスポータビリティ:サービス(例:電話,ISDN)を変更しても同じE.164番号を使用可能。
現在,AT&T・MCI・アメリテック等のキャリアと番号管理を行うロッキードマーティンIMS社およびベンダ数社が参加する番号ポータビリティの実験がイリノイ州で行われており,運用フロー等の技術的な課題が克服されつつある。
◆ 《サービスポータビリティ》
広義の番号ポータビリティとして,利用者の場所が変わっても同じ番号が利用できるロケーションポータビリティ,およびすでにNTTで提供しているアナログサービスからISDNサービスへの変更においても同じ番号が使用できるもの。