ファジー
FUZZY
あいまい理論と呼ばれる新しいコンピュータ理論。1965年,米国カリフォルニア大学の数学者,L.A.ザデーが提唱した情報処理の方法。従来のコンピュータは,「100度の水」,「50歳の男性」というような概念規定のはっきりしたディジタル数値情報しか扱えなかったが,新しいファジー理論による制御では,「熱めのお湯」,「中年の男」といった日常頻繁に使われるあいまいな表現のデータも扱うことができ,こうした幅の広い概念でコンピュータを動かしたり,検索したりすることが可能である。この制御は,人工知能の技術水準が引き上げられたことで実用化された。従来のディジタル情報に替え,メンバシップ関数と呼ばれる新しい概念の数値であいまい情報を表す。例えば,電気炉に応用することで,溶解温度を原料や投入電力量に応じて自動的にはじきだすことができるようになり,省力化が進む。酒の醸造工程に応用することで,これまでになかった風味を新たに加えることもできるようになる。こうした理論は生産現場ばかりでなく,身近なところでも実用化が進められており,ファジー制御による列車運転システムが仙台市の地下鉄,水処理システムが秋田市の浄水場で使用され,東京都でも建設する地下鉄12号線にファジー技術を取り入れることにしている。今後ますます複雑なあいまい情報を処理する能力が向上,活用される範囲も広がりそうである。