ポータブル燃料電池
(1)直流出力,(2)交流出力,(3)蓄電池内蔵タイプ,の3タイプの出力形態の系列化を図るとともに,安全対策を向上させた燃料電池システム。小型燃料電池セル,水素ボンベ,電力交換装置,制御装置類をキャビネット内に収容したもので,容易に運搬可能な実装形態としている。
(1) 直流出力タイプ
水素ボンベおよび燃料電池本体をキャビネット内に収容し,水素ボンベが露出しない構造とするとともに,屋内はもちろんのこと屋外でも使用可能な通気性・防滴性を兼ね備えた筐体構造を採用。また水素ボンベ収容部と燃料電池本体収容部は合体・分割が可能な構造とし,運搬の容易性を確保。
出力電圧は,通信用途のDC55Vに加え,汎用のDC12Vを選択できる。システム当りの定格出力は250Wである。また燃料タンクは,容量7ℓの水素ボンベ2本を収容することとし,満充填時で定格出力で約6時間の連続運転が可能。
(2) 交流出力タイプ
出力電圧がAC100Vであり,定格出力は200W。
主な機能である定格出力時の連続発電時間,運転可能時間表示機能,並列運転による高出力化機能,商用電源の停電・復電時の自動起動・停止機能,安全対策機能および遠隔監視機能,直流出力タイプと同等の機能を有している。周波数は50 Hzと60 Hzに任意に切り替えることが可能。
(3) 蓄電池内蔵タイプ
緊急時の災害用電源への適用を目的とし,即発電できるように蓄電池を内蔵させたもの。
本システムは特に大径の中空タイヤを採用したことにより,ある程度の段差および悪路においても容易に運搬が可能となった。また,内蔵した蓄電池により起動から発電モードに移行するまでの時間の電力を供給するもので,出力電圧は汎用のAC100VおよびDC12Vである。
本燃料電池の発電原理は,リン酸電解質を挟んだ燃料極および空気極に,燃料である水素と空気を併給すると,リン酸電解質を介して水素と空気中の酸素が電気化学的に反応し,電力出力が得られる。したがって,生成物は水だけであり,また原理的に可動部分もなく,クリーンで静かに発電させることができる(図)。