ADSL
Asymmetric Digital Subscriber Line
メタリック電話線を用いて高速伝送を行う方式で,光加入者網構築までの高速通信サービスの早期展開を図るための加入者区間の伝送手段の1つ。既存のメタリック電話線を用いて,電話交換所から一般家庭への方向(下り方向)は1.5~12 Mbit/sの高速信号が伝送され(高速チャネルと呼ばれる),一般家庭と電話交換所間の双方向には16~64 kbit/sの制御信号(選択要求信号等)が伝送される(低速チャネルと呼ばれる)。非対称(Asymmetric)とは,上り下りの伝送方向で伝送速度が異なる(対称でない)ことに由来している。
電話局と加入者宅を結ぶ加入者線の両端にADSLモデムという装置を取り付け,このモデム間(電話局と加入者宅間)での高速なデータ通信を実現する。ただし,距離が長くなると減衰やノイズの影響等によって最大転送レートが下がるため,通常は電話局から数kmまでの範囲でしか利用できない。既設の2心の銅線をそのまま使って高速データ通信を行えるため,注目されている。
類似技術として,両方向で同じ通信速度を持つHDSL(High-bit-rate Digital Subscriber Line),SDSL(Symmetric Digital Subscriber Line)やさらに高速なVDSL(Very high-bit-rate Digital Subscriber Line)があり,情報速度,速度の対称/非対称等の違いにより分類されている(表)。これらは総称して「xDSL」と呼ばれている。またADSLが使用している変調技術には,①CAP(Carrierless Amplitude Phase modulation)方式と,②DMT(Discrete MultiTone modulation)方式の2方式がある(図)。
① CAP方式:トライアルなどに多く使用されている業界標準的な方式。回路設計が容易で消費電力も少ないが比較的雑音に弱い。
② DMT方式:ANSI(米国規格協会)で標準化された方式。雑音に強いが消費電力が多い。