CALS
Commerce at Light Speed
調達から設計,開発,生産,運用管理,保守に至る製品のライフサイクルに関する情報を統合データベースで一元管理し,各工程をサポートしようという米国のビジョン。CALSの定義はその発展とともに変遷してきているが一言で表現すれば,「企業内/間でやりとりされるあらゆる情報の取扱に関する,世界規模での標準の取決めとその実践」といえる。
また基本概念は,「一度つくられたデータを,製品のライフサイクルの間,幾度も繰り返して使用する」,および「データの統合,交換,共有を可能とするため,共通の標準を確立する」であり,企業活動の改革のためのビジネス情報インフラと位置付けることができる。すなわち無駄の排除,意思決定の迅速化,業務の高付加価値化による製品の納入期間短縮,コストダウン,品質向上を狙いとして,開発,製造,購買等の各部門が緊密な関係の下で様々な情報を共有して業務を遂行できるよう,企業内外に張り巡らせたネットワークを介して情報を瞬時に伝達するとともに,共通のデータベースをアクセスして情報を共有化することが容易に行えるような仕組みをつくることがCALSの目標となる(表)。
CALSは米国国防総省の軍事物質(兵器の部品,消耗品)の後方支援の電子化を目的としてスタートした(Computer aided Logistics Support,1985年)。その後,CALS普及とともに国防総省と契約企業間の調達に関する業務にまで範囲が拡大し(Computer-aided Acquisition and Logistics Support,1989年),さらに,製品の設計,開発,運用,更改といった製品のライフサイクルの支援(Continuous Acquisition and Lifecycle Support,1993年)にまで広がり,現在は,技術的なデータ交換だけでなくEDIといった商取引の概念まで包含されるようになっている(Commerce at Light Speed,1994年)。これに伴い米国における活動の主体も国防総省から商務省に移り,1994年にはCALS推進のための国際組織としてCALS Internationalの設立が決定され,1995年から日本を含む米国,欧州およびアジアの企業を中心に活動を開始している。開発・設計・調達から保守・運用までの各局面において,関連するすべての企業が相互に情報を交換,共有,活用することにより,開発,調達のリードタイムの短縮,生産性の向上,さらには製品のライフサイクル全体を通じたコストの削減を実現。