用語説明

SuperENC

情報量の大きな映像の圧縮処理を行うことができる,NTTで開発したMPEG-2ビデオエンコーダLSI。ワンチップでの圧縮処理はもちろん,複数チップを連結することで,HDTV映像までの圧縮処理を実現している。また複数のプロセッサを内蔵しており,「低遅延優先」,「高画質優先」等,NTSC/PAL対応の4つのモードでの映像信号圧縮処理を柔軟に行うことができる。これによってテレビ会議システム等の映像通信やDVD機器等の映像関連機器等,幅広い映像分野への適用が可能。さらに,HDTVまで拡張可能なMPEG-2ビデオエンコーダLSIとしては,世界で最も小型・低消費電力化も実現した。

SuperENCの特長は以下のとおり。

① 連結したときに自動的にLSI間の映像圧縮処理の働きを調整するLSI間協調符号化機構を備えており,複数個連結して用いることでHDTV等の情報量の大きな映像信号をリアルタイムに符号化することができるなど,幅広いタイプの映像の圧縮に対応することができる。さらに,DVDレコーダ録画用の新開発1パス可変ビットレートの採用や,DVD規格のビデオパケット出力のサポート等,これまでになかった高い機能と拡張性を特長とする。

② 従来のMPEG-2エンコーダLSIに内蔵されている全体の働きを制御するRISCプロセッサに加えて,符号化処理を効率良く実行するための18個の演算ユニットからなるプロセッサを内蔵している。

③ 動きの変化量の大小によって広域探索と近傍探索を適宜使い分けるLNF動き探索法(Look Neighbor First Search)と,速い動きへの追従性を高めるエリアホッピングを開発し,この2つを組み合わせた動き検出ユニットを搭載した。

◆ 《低遅延》

エンコーダLSIに映像を入力し,それに対応する圧縮信号が出力されるまでのタイムラグが短いことを指す。双方向の映像通信でスムーズなコミュニケーションを行うには,自分の側の映像をできるだけリアルタイムに近く,相手に届ける必要があるが,これを実現するためには,低遅延で符号化できることが必須になる。

◆ 《1パス可変ビットレート

容量に制限がある記録媒体に録画する際,録画する映像信号の状態によってエンコードの圧縮率を時々刻々と変化させ,録画の品質を保つ仕組み。これによって1回の録画で記録媒体の容量を最大限に活用できるようになる。

◆ 《ビデオパケット出力》

DVDの書き込みに用いられる基本のデータ形式であり,パケットと呼ばれる2 kbyte長のデータ束の並びで構成される。

◆ 《RISC(Reduced Instruction Set Computer)プロセッサ

基本的な簡易命令しか持たないプロセッサのこと。命令数を減らすことによって制御系をシンプルにし,ハードウェア設計を容易に,かつ処理速度の高速化を実現する。

◆ 《エリアホッピング》

映像画面全体の動きを予測して,その動きに合わせて探索する範囲を移動させる機能。