ATM(非同期転送モード)
Asynchronous Transfer Mode
1980年頃からCCITT(現ITU-T)で検討されたB-ISDN(広帯域ISDN)の伝送方式で,音声,データ,映像等のあらゆる情報をすべて48 byteずつの一定の長さで区切り,それぞれに5 byteの制御情報(ヘッダ)を付加して53 byteのセルと呼ばれる固定長パケットで転送する方式。ユーザからの主情報(ペイロード)は48 byteで運ばれる一方,セルの先頭から5byteの部分の情報に従って,経路選択すなわちネットワーク内のどの経路を通るかが決められる。この経路選択情報には,VPI(Virtual Path Identification)とVCI(Virtual Channel Identifier)の2種類があるが,従来のSTM(Synchronous Transfer Mode)ネットワークと同様に,チャネルを多数収容するパスの経路選択情報としてVPIが,また1チャネルごとの経路選択情報としてVCIが使用される。現在の電話網,狭帯域ISDNなどの回線交換方式では,STMが用いられている。ヘッダにはVPIやVCIの経路選択情報以外に,当該セルが運んでいるペイロードの情報の種類(ユーザ情報か保守運用情報かなど)を示すPTや,輻輳時等のセル廃棄優先度を示すCLP,さらにはヘッダ自身の誤り検出・訂正を行うHECがある。また,UNI上では,複数のユーザ端末からの情報を交通整理するために,セルの先頭4bitがGFCとして使用される。ATMは今までの回線交換,パケット交換のそれぞれのメリットを生かした新しい通信方式である。周期的なフレームにより通信速度が固定化されるSTMに比べ,ラベル多重を用いるATMでは,通信ごとのセルの送信回数を変えることにより,通信速度を任意に設定できるばかりでなく,様々な速度の通信を統一的に扱うことができる。また,ATM網内のクロスコネクト装置や交換機ではラベル情報をもとに,自己ルーチングによるハードウェアスイッチングが行われる。パケット交換でも同様にラベルをもとにスイッチングを行うが,ソフトウェアでスイッチングを行うパケット交換に比べ,ATMでは固定長のセルをハードウェアでスイッチングできるため,極めて高速に動作することが可能で,データや音声のみならず,HDTVのような高速な映像情報も扱うことができる。ATMは,通信速度に依存せず,各メディアを統合して扱え,かつ高速に通信することが可能なモードである。
◆ 《階層符号化》
ATM網では,網輻輳時に情報の一部廃棄(セル廃棄)により網機能を維持する方式を採り入れ,網コストの低減化を図ることが考えられている。セル廃棄に対して,映像品質等の低下に対する耐力を高めるための符号化方法のことで,複数の階層符号化方法が提案されている。
◆ 《トラヒック記述子(Traffic Descriptor)》
ATM網においては,VCまたはVPのコネクションを設定する場合,それらのトラヒック特性を網はあらかじめ知る必要がある。このトラヒック特性を表わすパラメータ(平均速度,ピーク速度,バースト性,ピーク持続時間)をトラヒック記述子という。
◆ 《ヘッダ変換機能》
ATMのセル処理機能で,コネクション設定時にあらかじめ設定されたヘッダ変換テーブルを索引して,入力セルのヘッダを所望の宛先を示すアドレスに変換する機能である。ヘッダ変換と自己ルーチングの組合せで,情報の交換動作が実行される。