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10月号 2019 Vol. 17 No. 10

English

Feature Articles: Creating Novel Functional Materials

■ 概要
NTT物性科学基礎研究所では、原子・分子レベルで物質の構造や配列を制御することにより新しい物質や機能を創造し、物質科学分野での学術貢献を行うとともに、情報通信技術変革の種を創出することをめざして、広範な物質を対象に研究を進めています。本特集では、その中から酸化物や窒化物をはじめとする無機材料に焦点を当て、厚さがマイクロメートル程度以下の薄膜、続いてナノメートル以下の原子層の厚みで機能を発現する二次元構造物質、さらには一次元的なナノワイヤに関する最新の研究成果を紹介します。
■ 概要
NTT物性科学基礎研究所では長年にわたり開発・蓄積してきた独自の酸化物合成技術によって、電気を通さない物質(絶縁体)の中で、最高の温度(780℃以上)で磁石としての性質(強磁性)を示す新物質Sr3OsO6〔Sr(ストロンチウム)、Os(オスミウム)、O(酸素)からなる物質〕を世界で初めて合成・発見しました。これは、絶縁体の強磁性転移温度(キュリー温度)を88年ぶりに更新する成果であり、室温以上の高温で安定に動作する磁気素子への応用が期待されます。
■ 概要
希土類元素であるEr(エルビウム)は通信波長帯光子による量子情報操作のプラットフォームとして期待されています。しかしEr添加母体結晶の高品質エピタキシャル成長が困難なことや量子操作の性能を決定する量子情報の保持時間が理論的に予測されるものよりはるかに短いことなどが問題でした。本稿ではErの母体結晶として相性の良い希土類酸化物、特に量子情報保持時間の短寿命化の主要因である核スピンを除去(磁気的純化)した母体酸化物結晶(CeO2:酸化セリウム)に着目し、その薄膜のSi基板上への高品質エピタキシャル成長と光学的性質について紹介します。
■ 概要
銅酸化物超伝導体は、常圧下で最高の超伝導転移温度を有する物質群です。無限層構造と呼ばれる構造は、その銅酸化物超伝導体を構成する基本構造で、超伝導発現機構解明の鍵を握りますが、この構造単独ではバルクの単結晶を作製することができません。NTTでは、独自に培ってきた酸化物分子線エピタキシー技術を用いてこの物質の単結晶薄膜を作製するとともに、原子分解能顕微鏡など最先端の測定技術と組み合わせて、いまだ定説のない高温超伝導発現機構の解明に挑んでいます。
■ 概要
グラフェンや六方晶窒化ホウ素(h-BN)などの原子層物質は、従来のエレクトロニクス材料を凌駕する電気・光学特性さらには新奇物性を有するなど、既存デバイスの高性能化のみならず新機能デバイス創製の可能性を秘める次世代のエレクトロニクス材料です。産業応用に向けて、原子層物質を大面積で高品質に作製する手法の確立が望まれています。本稿では、高品質グラフェン単結晶の大面積化、結晶方位制御によるh-BNの高品質化技術を紹介します。
■ 概要
ワイドギャップ半導体であるc-BN(立方晶窒化ホウ素)は、半導体の中でもっとも高い絶縁破壊電界を有しており、高効率なパワーデバイスを実現できる材料として高い可能性を秘めています。NTT物性科学基礎研究所では、独自の成長技術を開発することによって、c-BN薄膜の高品質ヘテロエピタキシャル成長を初めて実現しました。本稿では、その成長技術と、実際のパワーデバイス応用に不可欠なドーピングによるc-BN薄膜の電気伝導性制御について紹介します。
■ 概要
GaP(リン化ガリウム)は環境にやさしい間接遷移型半導体材料ですが、ナノワイヤ成長によりウルツ鉱型の直接遷移型を作製できます。NTT物性科学基礎研究所では塩素によるエッチングとガリウム原料の繰り返し供給による手法で積層欠陥のないウルツ鉱型GaPナノワイヤの成長に成功しました。これまで、ウルツ鉱型のGaPナノワイヤを用いて、p型ナノワイヤ光カソード電極での太陽光による水素生成の試みやpin型ナノワイヤ太陽電池の作製、評価等を行いました。

Regular Articles

■ 概要
電界吸収光変調器集積型DFBレーザ(EML)の電力変換効率と変調時光出力を大幅に改善する手法としてEMLに半導体光増幅器(SOA)をモノリシック集積したAXELが提案されています。本報告ではL帯およびO帯の波長域におけるAXELを試作し、高い電力変換効率と高光出力特性を確認しました。L帯波長域におけるAXELでは変調時光出力9 dBmと同時にSOAのもつチャープ抑制効果によって10 Gbit/s伝送の80 kmの延伸が達成されました。加えてO帯波長域のAXELとAPD-ROSAによる光リンクにおいては、その高出力特性によって強度変調-直接検波方式としては世界初となる28 Gbit/s信号の80 km伝送を達成しました。

Global Standardization Activities

■ 概要
一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)は、総務省認定の標準化機関として30年以上にわたり情報通信分野における標準の作成やその普及に貢献してきました。情報通信を取り巻く環境が、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展など劇的に変化する中で、TTCに求められる役割も変わりつつあります。グローバル市場における日本企業の現状と課題を示すとともに、今後のビジネス戦略の参考としていただくために、最新の技術トレンドとTTCの取り組みについて解説します。

Practical Field Information about Telecommunication Technologies

■ 概要
通信技術の基礎知識をテーマとするシリーズ第54弾となる本稿では、さまざまなツール・測定器を駆使して解決に導いた、お客様の電話システムにおける「発信時に押下したダイヤルと異なる相手に接続される事象」と「特定の相手と通話中に無音状態となり会話ができなくなる事象」について紹介します。

External Awards/Papers Published in Technical Journals and Conference Proceedings
外部での受賞もしくは投稿した論文の抄録

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